競売物件の思い出

抵当権設定後の賃借権は競落人に対抗できない・・・今でこそ当り前ですが昔は違いました。

その頃はまだ不動産業とは関係ない仕事をしておりましたが、叔父がマンション一棟を競落して自主管理をしていたので、いろいろ経験させてもらいました。ちなみに叔父は不動産業とは無縁のサラリーマンで、今は悠々自適の年金暮らしです。

いまから18年ぐらい前のことでしたけど、何をトチ狂ったのか、突然叔父が一棟物のマンション競売に参加し、見事激安で落札するということをやったわけですが、1階のテナントにはそれぞれ200~300万円の保証金が入っていて、3階の角部屋には右翼団体の事務所が入っているという訳あり物件でした。

そして、落札したので契約内容を自分で新たに決められると思っていた無知な叔父は、最初の交渉で暗礁に乗り上げて途方に暮れ、私に相談してきました。そんなこんなで仕方なく当時まだ20代だった私が代理で各部屋や店舗と交渉したわけです。

冒頭にも書いたとおり、法が改正される前は、3年を越えない期間で設定された賃貸借契約は、抵当権設定後の賃借権であっても抵当権者に対抗できました。そのため、競売になりそうな物件のオーナーは、反社勢力や一般人が関わりたくない団体などと共謀して、競売を妨害するというのが色んなところで起きていました。その結果として法改正に繋がっていったみたいですけどね。

そしてご多分に漏れず叔父が落札したマンションも、短期賃貸借保護という制度を悪用した競売妨害している物件だったわけです。

そのため、叔父は落札したマンションの前オーナーが結んだ契約を引き継がなければならなくなり、保証金と敷金の合計である約1100万円の返還義務を負い、近隣の相場を無視した賃料(右翼事務所)で部屋を貸さなければならなくなったのでした。

とはいえ、落札後は国は助けてくれません。あくまでも自己責任ですから。嫌なら入札しなければよかっただけのことですもんね。まぁ、当然です。

そこでまず私は右翼団体の方と交渉する事から始めました。理由は単に一番面倒くさそうだったからです。叔父が嫌がった(マテ)ので独りで訪問し、責任者である『塾長』という肩書の方と話しました。

契約書からすると、昔からそこで事務所を構えていたわけではなく、競売妨害目的というのが明らかだったので、単刀直入に立退の交渉をし、結果300万円で退去してくれることになりました。

とはいえ、こちらだって転んでもタダでは起きません。前オーナー(行方不明)と1階のテナント連中が結んだ契約について何か知ってるか尋ねたところ、気をよくした塾長さんが「あんなもん保証金から何から全部デタラメだ」と教えてくれたので、その情報を使って店子連中と交渉しました。

「契約書の巻き直しをお願いします。は?保証金?・・・いや、うちとしてはこのまま借りてもらいたいので、刑事事件になるようなことは避けたいんですけど。えぇ、全部承知した上でうちは落札してるんですよ。○○さん(前オーナー)との賃貸契約の内容が嘘だってことは存じてますので。虚偽申告してたのがバレたら2年以下の懲役(もしくは250万円以下の罰金)になっちゃいますけど、もし言い張るのでしたら警察行きますよ。どうします?」

こんな感じで。

右翼団体の事務所が立ち退くことになったのも効果があったんだと思いますけど、おかげで店子すべてが以前の契約を破棄し、保証金0円で新しい契約書にサインしました。

叔父からは感謝されまくって、今だに関係は超良好です。

そんな曰く付きのマンションでしたが、私が不動産屋になる前に叔父は売却してしまいました。今なら私が買うのになぁ~と、年に数回くらい思い出してはヘコんでます。およそ10年間ぐらい所持した後に、落札金額のほぼ倍額で売却してました。マジ最高ですよね・・・。

もし法改正されてなかったら、こういった案件専門の不動産屋になってたかもしれません(笑)

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