前回の続きです。
7.現地照合の調査を行う
例えば法務局で手に入れた地積測量図に記載されている敷地間口が6mだったとします。作成年月日が昭和40年代という古い物だった場合、実際は6mではない可能性があります。東京都では500㎡を超えるマンションを建築する場合、接道の長さが6m以上ないと建築できませんが、これをそのままにして接道6mなんて重説に書いて契約した場合、その後6m未満だったことが判明して建築予定の建物が建たないなんてことになれば損害賠償を請求されます。「この資料は古いためあくまでも参考です」としても、訴えられたら負けます。(実際にこういった内容で業者が訴えられて負けた裁判があります)
法務局、役所、ガス会社などを回って得た情報や資料と、再度現地に赴いて書類と現地の比較照合を行って、ようやく調査完了となるわけです。
その際に現地と資料が一致しないこともよくあります。その時は、これとこれがこの資料とは一致していませんという告知をすることがポイントです。先の例でいえば「参考です」ではなく、現地と照合して「地積測量図(接道長さ6m)と実測(接道長さ5.9m)は一致していません」となっていれば、業者が負けることはないですし、そもそも訴えられてないわけです。
現地照合はさぼらずちゃんとやりましょう。
8.販売活動の開始
ここまでやったら、レインズに物件情報を登録し、ようやく販売開始となります。一般媒介の場合は任意ですが、他社に先を越されないように登録しておいた方がいいです。レインズに登録しなければ客付してくれる業者もないので、自分だけで買主を探さなければならなくなりますので。
専任もらえたら価格や条件がよほどおかしくなければ、基本的には片手分の手数料は確定したようなものなので一丁上がりです。あとは自社で買主を見つけられれば両手になるので、期待しながら頑張るといった感じですね。
お客さんのことを第一に考えるなら、広告転載区分は可にして登録しましょう。
9.物件の案内
内見希望者が現れたら物件に案内するわけですが、もし物件が空家なら清掃はしておきましょう。スリッパも置いておきましょう。だいぶ前の話になりますが、賃貸の案内をした際にシンクにゲロみたいなのが固まっていたことがあって、「ここに決めます」とお客さんからいわれた10秒後ぐらいにそれを発見されて「やっぱりやめます」となって流れたことがありました。もちろん元付にはクレームいれましたが、だからといって逃した客が戻ってくるわけでもなく・・・・。物件を綺麗にしておくというのは本当に重要ですので忘れずに。
空家の場合、鍵は事務所で保管するか、キーボックスつけて現地対応にするかになりますが、キーボックスの方が断然楽なので、売主さんから許可をもらってキーボックス対応にするのをおすすめします。どちらの場合であっても、客付業者が案内した後は物件を確認しに行った方がいいです。鍵の閉め忘れとかありますからね。客付が案内時に窓を開けたまま閉め忘れて、雨で畳をボロボロにされたなんて元付業者さんもいらっしゃいますので・・・信じられるのは自分だけです。
居住中の物件は売主さんの都合もありますが、なるべく早めに内見できるように手配しましょう。「今週と来週の週末は無理です」とかワガママ言わせてると、機会損失するばかりです。売主を説得するのも元付の仕事だと思います。そして掃除のお願いも忘れずに。
10.買付申込をもらう
購入希望者が現れたら買付申込(不動産購入申込書)をもらいます。書式は任意のもので構わないと思います。指定すると客付とやり取りが面倒くさいので・・・。
指値を入れられることもよくありますが、基本的には受けないスタイルでいった方がいいです。元がよっぽど高いとか、全然売れずに晒し物件化しているとかなら話は別ですが、お客様(売主さん)の利益を考えれば、容易く指値に応じるのは悪手でしかありません。「こないだ指値入れた買付をお断りされてたので難しいかと思います。一応お伝えはしてみますけど・・・」みたいなことを言って、満額で買い付け入れ直させるように促したりして、ギリギリまで粘るべきだと思います。私自身は客付の時は頑張って値引きしてもらえるよう交渉しますし、元付の時はなるべく指値は受けないようにしてます。そしてそのやり取りについて必ずお客さんに伝えています。いい業者だって思われたいので(笑)
11.住宅ローンの事前審査回答を待って重説・売契を作成する
物件未定で事前とおってる買主さんならそのまま契約日を決めます(一番手確定)が、事前審査がまだなのであれば、事前審査の回答を待ちます。この待っている間は「一番手」と見なしません。もし現金で購入したいという人が現れれば、迷わずそちらに売ります。ここら辺は業界内でも意見が分かれるところですけどね。うちはカスタマーファーストですので慣習とか無視です。
事前審査が無事とおったら重説と売契を作成します。といっても、媒介契約もらって現地照合調査まで済んだ時点で、基本的な内容を記載して作成しておきます。そこに買主の情報や客付がいればその業者の情報、売買金額や手付金の額、その他細かい内容を書いて終了です。
手付解除期限はなるべく短めに設定します。もし長くとるのであれば手付の額を増やします。簡単に手付流しされないためです。
それから住宅ローン特約についても、念のため「事前とおってるということですが、これ必要ですか?」と聞きます。「要りません」と言われたことありませんけどね(笑) もし「結構です」とか言われたら嬉しいので一応聞いてます。ローン特約の期限もなるべく短めで設定するようにしましょう。
12.重要事項説明と売買契約を締結する
ここまでくると仲手の確定です。半金をもらい、決済時に半金をもらうといった業者(住友不動産とかそうですよね)もおりますが、万が一ローン特約とか使われたら、もらってた半金返さなきゃならなくなるので、うちでは決済時に全額もらってます。
ですが、手付流しの場合は仲手もらえますので注意しましょう。払わなくてもいいと思ってるお客さんもいますので、事前にしっかりと伝えておいた方がいいです。
13.本審査&金消契約待ち、抵当権があれば抹消登記の準備
売却物件に抵当権が設定されている場合は、事前に抹消しておくか同時決済となります。手続きにおよそ2週間程度かかるので、決済日が決まったら抵当権を設定している金融機関に抹消のための書類を用意してもらいます。司法書士に当日立会いしてもらうよう依頼するのですが、基本的に抹消登記がある場合は、元付側で所有権移転登記も含めた連件の依頼を司法書士にお願いするのが楽です。
買主がローンを借りる金融機関の方で、抵当権を設定する司法書士を指定してくることもあります。その場合は司法書士A(元付手配)が抹消と所有権移転登記を行い、司法書士B(金融機関手配)が抵当権設定登記を行うことになり、決済時に銀行の応接室には売主、買主、元付、客付、司法書士A、司法書士Bが集まり、売主や買主が夫婦で来ている場合、部屋によってはすし詰め状態になることもあります。応接室が借りられなかった時などは、窓口前の椅子で行うことになるのですが、その様はもうなんというか・・・カオスです(苦笑)
14.決済・引渡し
金融機関にて関係者が一堂に会し、司法書士へ委任状を書いて、残金の受け渡し(買主から売主へ送金)と各報酬の支払いを行い、物件の鍵などを引渡して終了となります。同時決済の場合は送金後に抵当権を設定している金融機関に行って抹消登記に必要な書類をもらい、司法書士に渡します。
これで終了です。
個人的には元付をやる方が楽しいです。客付から「頑張ります」や成約後の問い合わせで「おめでとうございます」と言われるのは気分いいですし(笑)